依存偏愛
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パニックに陥った私が、何をしでかすかなんてわからない。それは大谷くんとの一件で、自分自身わかっていたはずなのに。
午後の練習が終わった今、私の目の前にいるのは他でもない椎名くん。解散になる前のこの短い時間に、間違いなく、私が呼び出した。
「笹川が俺を呼び出すなんて、何だか珍しいのう。」
「うん、ごめんね。」
さっきまで青々としていた空は、今やもう茜色。すでに端の方は、濃紺に染まりかけている。
「…で? 何の用ぜ?」
いつもと同様、飄々とした態度の彼は、訝しさをおくびにも出さずに私へ問い掛けてきた。
茜色に彩られた狭い中庭の中、互いを探るような視線が絡む。何とも言えない雰囲気の中、口を開いたのは私だった。