依存偏愛
顔を真っすぐ見ることができず、唇を噛み締めて視線をそらす。
けれどいつの間にか震え止んでいた大谷くんの腕から伝わるぬくもりに、涙が溢れた。
「…っ!どこか、痛むんですか?」
あえて言うなら、胸が痛いけれど。
流れる涙を手の甲で拭いながら、首を横に振る。涙が、手の甲のかすり傷に染みた。
「ごめんね、大谷くん。」
それしか、今の私には言うことができない。
何に対して謝っているのか、それさえも定かじゃないまま謝罪の言葉を述べるなんて、意味がわからないけれど。
「ごめん、ね。」
温かなぬくもりに包まれながら、何度もそう呟く。頬を伝った滴が、音もなく地面に落ちた。
【CHAPTER:09/side*SHIZUKU/END】