依存偏愛

「……早く言えよ。」

「あー、わりぃわりぃ。屋上で待ってるって言ってたぜ。」

「ふぅん。」


屋上で、一体何を話すというのか。
今さら、結城と話すことなんてない。
きっとどうせ、あたしと雫のことに関して言及されるだけだと、予想はつくし。

それでも行かなきゃ行かないでまたしつこいだろうから、見ていた記録を閉じて、騒々しい部室をあとにした。


◆◆◆


屋上の重いドアを開けば、眼前に広がる青い空。柔らかそうな雲が浮かぶ空を見上げて、フェンスに寄り掛かる結城の姿をすぐに見つけた。


「遅かったね。」


それは、蒼井の伝言が遅いから。
そうは思いつつ無言で結城の隣に腰掛ければ、彼は控えめに、呆れたように小さく笑った。
< 178 / 212 >

この作品をシェア

pagetop