依存偏愛
「笹川さんとのことも、渓都とのことも、だよ。」
案の定紡がれた、予想通りの言葉。
これ以上聞いたところで、あたしにどうしろっていうの。
未だ向けられている視線に気づかないフリして、あたしは再び立ち上がり、結城に背を向けて歩きだした。
「……帰る。」
「逃げてたって、何にも変わらないよ。」
「うるさい。」
“逃げてたって、何にも変わらない”
そんなことわかってる。わかってるけど、向き合う勇気があたしにはない。
重たい音を立てて閉まったドアの向こう、涼しい顔をして空でも眺めているのであろう結城を想像して、どっと疲れが押し寄せた気がした。