依存偏愛

刹那、階段横の物置スペースから聞こえた物音。はっとして視線を向ければ、飄々たる表情を浮かべた男がゆっくりと顔を出した。


「……盗み聞きとか、趣味悪い。」

「どうも気になったがやき。仕方ないぜよ。」


仕方なくはないでしょうに。
呆れたように零してしまったため息、いつものように口角を上げる椎名を無視して、あたしは階段を下りることにした。


「……なぁ。」

「………。」

「旭。」

「……何。」


けれど3段目に足を下ろした刹那、不意に掴まれた左腕。仕方なしに振り向き、数段上の椎名を見上げれば、珍しい真剣な表情があたしを見下ろしていた。

…――そして。


「なぁ、旭。俺はおまんの味方じゃき。おまんがどんな選択をして、どんなことをしようと、おまんの傍にいるぜよ。」


紡がれた言葉が、ちくりと胸を刺す。
だけどそんな言葉、あたしにはいらない。必要ない。
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