依存偏愛
しかも相手は椎名だ。
信用なんて、できない。
「信じない。」
「それはそれでいいぜよ。俺は勝手におまんを信じて、勝手におまんを好きでおるき。」
目の前の男は、一体何を言っているんだ。
どうしてここまで、あたしに執着するんだ。
「……迷惑、なんだけど。そういうの。」
「放っておけないき。仕方ないぜよ。」
「あたしは、あんたなんか好きにならないし。」
「それでもいいがじゃ。おまんが笑っていられるのなら、それでいいぜよ。」
訳が、わからなかった。
椎名がそんなことを言う意味も、今まで見たことないような、優しい笑顔を見せるの理由も。
掴まれた左腕から伝わるぬくもりが、苦しい。あたしは結局何を思って、どうしたいのだろう。
雫とあたし、ふたりだけの狭い世界に、亀裂が入った音がした。
【CHAPTER:09/side*ASAHI/END】