依存偏愛
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「なぁ。」
「……」
「なあって。」
「……」
「旭。」
「しつこい。何なの。」
サクとの電話後、椎名のことは無視を決め込んで帰路を歩いていたというのに、何ともないように話しかけてくる椎名にいらっとして、ゆっくり振り返る。すると、いつになく真剣な切れ長の瞳があたしを捉えて離さない。
「おまんはあれでええがか?」
「…何が、」
「あれが、おまんの結論っちゅうわけか?」
椎名が今、あたしに何を問うてるのか、理解するまでおよそ3秒。おそらく、あたしとサクの電話を聞いていたからそんなこと聞いてきたんだと思うけれど。
射抜くような瞳を見つめ返し、そう。とたった一言だけ短く返せば、刹那、ゆっくりとあたしの顔に伸びてきた手。頬に触れられ、反射的に瞑ってしまった眼を開ければ、映ったのは一変して、優しげな椎名の笑顔だった。