依存偏愛
「……旭ちゃんのこと、馬鹿にしないで。」
「え?」
ぼそり、と呟いた私に、さっきまでの調子で振り返る畑島さん。
でもすぐに私の様子の異変に気がついたのか、彼女の表情は困惑に染まる。
「……どうしたの?笹川さん。」
どうしたの?じゃないよ。
畑島さんが、旭ちゃんを馬鹿にしたんじゃない。
「何にも知らないのに、旭ちゃんを馬鹿にするのはやめてね。」
けれど、必死に引き攣る頬を吊り上げ、笑顔を作ってそう言った。来月にはすぐ、楽しみにしている合宿がある。その前に、部内で変な確執を作りたくはなかったから。
未だ困惑の表情を浮かべる畑島さんに背を向け、更衣室を出た。着替え途中だったため、ジャージ姿だったけれど気にしない。
夕暮れの空を見上げ、今旭ちゃんは何をしてるのだろうかと、ふとそんなことを思った。
【CHAPTER:01/side*SHIZUKU/END】