依存偏愛
そして、


「おまんの心も、少しは軽くなったかえ?」


唐突に発された問いに、すぐさま反応なんてできなくて。あからさまに戸惑ってしまったあたしに、椎名は続ける。


「おまんらの言う“誓い”に縛られんでも、旭、おまんはひとりじゃなか。」


あたし自身、だいぶ気持ちを整理して今日雫に会ったはずだった。
でも、傷だらけの雫を見て過去と重なって、また守れなかった自分が情けなくて。それでも、あたしはそんな雫に、雫にとって1番残酷なことを突き付けて、泣かせた。

誰よりも大切な双子の片割れを、あたしが傷つけた。

だから、それをわかってるからこそ、今改めて椎名にそんなことを言われる意味がわからない。カフェでの雫を思い出して、ちくりと胸が痛んだ。


「あんたは、何を言いたい。」

「笹川と何を話したかまでは知らんき、詮索はせんがじゃ。けんど、おまんがまだ悩んでるようじゃったから、ひとつ、言いたかっただけぜよ。」

「え…」

「俺は旭の味方じゃき、おまんはひとりじゃなか。それと同じく、“誓い”がなくても、笹川もひとりにはならん。それがわかってたき、旭は大谷に電話しちょったんだろ?」


…何でそんな、何でもわかってるとでも言いたげな言い方をするのか。
でも的確な指摘に何も言い返せず、ぎりっと奥歯を噛みしめる。
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