依存偏愛
だけど、そんなの今に始まったことではないんだ。よくよく考えれば。
椎名はなんだかんだと傍にいて、あたしのことは何でもわかるとか言って。あたしの行動に何の否定も肯定もしない。椎名自身が言ったとおり、あたしがどんな選択をしても味方ではいてくれたのだ。時折それが、うっとおしかったのだけど。


「じゃけぇ、もう一回聞くぜよ。旭の心も、少しは軽くなったかえ? 何でもひとりため込むんじゃなか。もう、おまんらはふたりだけじゃないき。」


何で、そんなことを言うの。
何で、どうして。

一層深くなっていく赤の中、答えることができずにうつむく。こんなに簡単に救いの手をさし伸ばされたら、散々悩んできた自分がバカみたいじゃない。視界をにじませる涙がこぼれないようにと唇を噛みしめれば、刹那、あたたかなぬくもりに包まれる。


「俺は、旭が好きぜよ。おまんが嫌がっても、傍にいるき。」


いつも何気なく聞き流していたこの言葉が、今日はとてもあたたかいものに思えた。そして、高校に入ってから今日までずっと、苦しいときもつらいときも、椎名が傍にいてくれたことを思い出す。まあそれが、本意だったか不本意だったかは別としてだけど。
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