依存偏愛
「……嫌がっても傍にいるのは、今までと同じじゃん。」


苦笑をこぼしながら、そう悪態ついてうずめていた顔を上げれば、刹那、椎名が驚いたような表情を浮かべる。


「笑った…」

「は?」

「いや……」


だけど見たこともないような顔してあたしから顔をそむけるから、結局意味がわからないままで。まるでその代わりとでもいうように抱きしめる力が強まった。


「ちょ、椎名、」

「好き、ぜよ。旭が。」


あたしの言葉を遮るように、再び紡がれた言葉に、あたしがさっき雫に言い放った言葉を思い出す。

“あたし達、ほんの少しだけ、他人を受け入れてみよう。”

そうだよ。あたしたちの世界は、もうふたりだけじゃない。
あたしも雫も、前に踏み出さなければいけない。恐れずに、新しい世界に踏み出さなければ。


「……ありがと。」


茜色に染まる屋上、それだけ小さく呟いて、あたしも椎名にぎゅっと抱きつく。

…―――大丈夫、怖くなんてない。

椎名から伝わるぬくもりと想いに、心が少し軽くなった気がした。





【EPILOGUE/side*ASAHI/END】
< 202 / 212 >

この作品をシェア

pagetop