依存偏愛
かったるい入学式を終えたのは、昨日。
星南よりも若干大きな校舎には、特に感慨は抱かなかった。
見知った顔もちらほら見つけたけど、あたしから声をかけることはしなかった。第一、その行為に意味なんて見出だせないし。
そんなふうに過ごしていたら、特に何にも変わったこと無く過ぎたんだっけ、昨日は。おかげで雫との電話じゃ、話す話題なんてなくて雫に申し訳なかったかもしれない。
そんなことを思い出し、歩きながら思わずため息をついた刹那、背後から突如かけられた声に足を止めた。
「……片倉、じゃなか?」
この独特な口調、そしてあたしのことを知っていそうな口ぶり。思い当たる人物は、藤宮大附属に1人しかいない。
でもアイツに、こんな朝っぱらから関わるのはめんどくさい。
このまま無視しようか考えていたら、あたしが行動に移るより早く、奴に顔を覗き込まれた。
「人違い、ではなさそうじゃのう。無視はさすがに酷いぜよ、片倉。
……にしてもおまん、何でここにいるん?」
相変わらず、真意を掴めないようなムカつく笑顔をあたしに向けて。