依存偏愛
「……朝からうるさい、椎名。」
「ははっ。相変わらずじゃけんど、俺のことは覚えていてくれたみたいで良かったぜよ。」
「……あっそ。」
…――椎名 渓都。
こんな妙なインパクトのある奴のことを、忘れろって方が無理。
でもあたしは昔から、コイツのことがイマイチ得意ではない。……ってかむしろ、嫌いなタイプの1人だ。
この飄々とした態度は然り、何かを企むように上げられた口角も、何でも見透かしているとでも言いたげな、鋭い瞳も。
馴れ馴れしい雰囲気も含め、全部が気に入らなくて、中等部での合同練習の時も、あまり関わらないようにしてきた。
それでもバスケは確かに上手いらしく、マネであるあたし達の耳にも名前は入ってくる。
そんなコイツが、他校のマネージャーであり、選抜メンバーに選ばれた時の、たった1年程の関わりであるあたしのことを覚えていたってのは、少し意外だったけど。
椎名の性格を考えれば、そこまで意外でもないのかもしれないと、1人納得した。