依存偏愛
「…珍しいって、何。」
「言葉のアヤだ。」
「余計意味不明。」
何、全く。謎な会話に大きくため息を吐き、その場を放置してあたしは更衣室へと足を向ける。けれど刹那、そんなあたしの肩を誰かがガシリと掴んだ。
「何。」
「マネ、やるの?」
「雫との約束、だから。……ダメ、なの?」
振り返り、相変わらずの笑みを湛える結城にそう問えば、彼の笑みは一層深くなる。
「いいや。むしろ、大歓迎だよ。君は優秀なマネだって、神部から聞いてるからね。」
「……あっそ。」
……神部もそんな余計なこと、何も結城に言わなくたっていいのに。
星南のエースである、容姿端麗な神部怜吾のことを思い出し、思わずため息が零れた。
別に神部そのものに対してじゃなく、神部を取り囲んでいた環境に対して。それもこれも、神部の周りはいつも、キャーキャー煩い女子共の声で満ちていたから。
あたしはそんな声も女も嫌いだったし、思い出すだけで気持ち悪い。アイツはアイツで、よくあんな声の中普通に生きられるなって、ほんの少し尊敬の域だった。