依存偏愛
「お、やっぱり片倉じゃん!ため息なんかついて、どうしたんだよ。」
そんな過去に思いを馳せるあたしの思考を中断させたのは、無駄に明るい男子の声。
聞き覚えのある声に、ある程度声の主を予測してゆっくりと声の方へと振り向けば、予想に違わぬ人物がそこにはいた。
「…関係、ない。」
「うっわ。相変わらずつめてー女。」
蒼井楓汰。
クラスは違うけど、同じ1年。
蒼井もまた、椎名と同じく去年の藤宮大附属中学の選抜メンバーの1人。
そんな彼はあたしの言葉に苦笑を零しながら、まるで何事も無かったように言葉を続けた。
「本当は俺、入学式で片倉見かけてさ。でもまさか片倉がこっちにいる訳ねーなと思って声かけなかったんだけど、やっぱり本人だったんだな。」
「……そ。」
苦笑をいつの間にか明るい笑みに変え、ニコニコと笑いながら話す蒼井を軽くあしらい、更衣室のドアに手をかける。
まだ何か言いたそうな蒼井を無視して、ピシャリとドアを閉めた。