依存偏愛
「忘れ物なんざ、するんじゃねぇぞ。」
ようやく宿舎の敷地に入り、藤宮大附属のバス横にゆっくりと停車したバス。そんな神部先輩の言葉を合図にして、次々とメンバーが下りていく。
私が下りたのは、1番最後。
運転手さんにお礼を言ってバスを下り、まず始めに辺りを見回した。
もちろん、旭ちゃんの姿を探して、なんだけれど。藤宮の男子メンバーは集まっているのに、そこに旭ちゃんは居ない。
昨日の電話で、確かに「明日ね。」って言っていたはずなのに……。
途端に不安になってきたのを気づかれないよう、星南の輪に加わろうとした刹那、私を呼ぶ声が鼓膜を刺激した。
「雫。」
しばらく会ってなくたって、私がこの声の主をわからないはずが無い。
だってそれは間違いなく、誰よりも大切な、私の片割れの声なのだから。