依存偏愛
「相変わらず生意気なヤローだぜ。先輩をつけろ、先輩を。」
「いや。」
呆れたように苦笑を零す神部先輩と、ぷいと顔を背ける旭ちゃん。
そういえば去年の合宿でもこんなことがあったな、なんて、思い出して懐かしくなった。
「……何笑ってんの、雫。」
「え?……あぁ、何でもないよ。」
「……ふぅん。」
そんなことを思いながら、どうやら無意識のうちに笑っていたらしく、旭ちゃんは私の顔を見ながら不思議そうに首を傾げる。
未だ不審げに私を見つめる旭ちゃんを笑ってごまかしていると、神部先輩の後ろから大谷くんがひょっこりと顔を出した。
「お久しぶりです。片倉先輩。」
そして長身の大谷くんは爽やかな笑顔でそう述べ、礼儀正しく頭を下げる。そんな大谷くんを見てなのか、珍しく旭ちゃんの頬が綻んだ、気がした。
「……うん。久しぶり、大谷。」
発された言葉からは、他に何も変わった雰囲気は感じられなかったけれど。