依存偏愛
困惑する私の心境を察してか、旭ちゃんは強く私の手を握る。
「………行こ、雫。」
そして私にそう囁き、旭ちゃんは歩き出した。そんな旭ちゃんに手を引かれるがまま、私もその場に背を向ける。
「ちょお、片倉。無視かいな。」
呼び掛けて来る大城くんに構うことなく、黙々と体育館へと歩く旭ちゃん。
一瞬だけ黙ったまま何かを思案しているような椎名くんと視線が絡んだけれど、そんな旭ちゃんの後ろに私はただ続いた。
そして体育館の隅っこ、部員達とは離れた場所に並んで腰を下ろす。未だ残る焦燥感に、腕ごと傷痕を抱きしめた。
「…――雫、ごめん。」
そんな私の横、未だ休憩中でくつろぐ部員達を遠目で見ながら、旭ちゃんは唐突にそう呟く。
でも、どうして旭ちゃんが謝るの?
別に旭ちゃんは、私に謝るようなことなんて、何一つしてはいないのに。