依存偏愛
「……片倉、先輩?」
まるで窺うように、あたしのことを呼ぶ声。その聞き覚えのある声と、しだいにはっきりしてきた輪郭に、ようやく相手が誰なのかわかった。
「大谷、か。」
「どうしたんですか、こんな時間に。」
「……そっちこそ。」
何だか寂しそうに、でも笑顔をあたしに向けてくれた大谷は、座っていたベンチのサイドに寄り、開けたスペースに座るよう、あたしを促す。
断る理由もなく素直に腰掛ければ、大谷は問いの答えを小さく呟いた。
「何だか、眠れなくて。」
「………あたしも。」
それに至る経緯は恐らく、というか絶対、異なるものであろうけど。同じ理由でこんな時間、まさか他人に出くわすなんて思わなかった。
前方に広がる闇に視線を漂わせ、広がる沈黙に身を委ねる。
窓越しに見たのと変わらない月が見下ろす中、大谷がポツリと言葉を零す。