依存偏愛

夜中なのに、はた迷惑な……。
それほど響いた声に、一体何事かと来た道を振り返る。


「何。」

「え、あー、あのっ! 旭、先輩って呼んでもいいですか?……あ、嫌ならもちろんいいんですけど!」


あたふたと慌てながら、そんなことを言う大谷。
全く、落ち込んだり喜んだり焦ったり。雫みたいにコロコロ変わる表情。そんなふうにあたしに接してくる大谷が、やっぱり可愛い。

―――でも、名前、か。

一瞬、雫のことが頭を過ぎった。
だけど別にもう、名前くらい他人に呼ばれてもいいのかもしれない。

だって、たとえ大谷に名前呼びを許したからって、あたしと雫の関係が変わる訳ではないのだ。

断る理由なんか、ない。


「………いいよ、サク。」


だからあたしも、そう大谷に返した。
大谷朔太郎、“サク”――彼がよく、同級生に呼ばれているあだ名とともに。

一瞬驚いたように目を見開いたサクは、刹那、嬉しそうに目を細めた。
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