依存偏愛
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「…――以上で、今回の合宿の全日程終了だ。各校、解散。」
そんな顧問の声で、散り散りになる部員達。各校専属のバスに向かう間際、あたしの方へ走り寄って来たのはサクだった。
「旭先輩、色々、ありがとうございました。」
「……あたし、何にもしてない。」
「いいえ!話せて、楽しかったですし。また、機会があれば。」
「……うん。」
簡単な会話を交わし、爽やかな笑顔を残してあたしに背を向ける。そんな背中をある程度見届けて、あたしは雫の元へと歩み寄った。
「雫。」
まだ、雫には話せてない。
だからきっと、サクとあたしの呼び方の変化に戸惑っているはず。だからあんな目であたしを見た。
だからこそ、別れる前に話さなきゃ。
ぽん、と軽く肩に触れれば、雫は大袈裟に、驚いたように肩を揺らした。
「…――っ、旭、ちゃん。」
「雫、話がある。……雫?」
――あれ。何かが、変だ。
いつもあたしを真っすぐ見つめる黒い瞳は、あたしを映さない。……否、映さないように、故意に泳がせているのか。
明らかに、様子が、おかしい。