依存偏愛
「……雫、何かあった?」
「…え? 何か、って何?」
そんな顔で、笑ってもだめ。
あたしには、わかるんだよ。
ごまかしは効かないことくらい、雫もわかってるでしょ。
…――理由はわかってる癖に、あたしも大概白々しいとは思うけれど。
「おい、笹川!そろそろ行くぞ。」
気まずく重たい、あたし達2人を包み始めた雰囲気に、神部の声が亀裂を入れる。
ハッとしたように俯きかけていた顔を上げた雫は、神部に「すみません、今行きますっ!」とだけ答え、その視線を恐る恐るあたしへと向けた。
本当に、恐る恐る。
今にも、泣きそうな顔で。
まるで何かに、怯えているかの如く。
何かを、怖れているかのように。
「………雫?」
「――っ、旭ちゃん、私もう行くね!みんな待ってるから!……じゃあね。」
「雫っ!」
あたしを避けるように背を向けた雫に、伸ばした手は宙を切った。
今まで雫が、あたしにこんな態度をとったことなんて、なかったのに。