依存偏愛
そして10歳のある日、いつも以上に酔いが酷かった父は、もう正常とは言えなかった。
一通り殴られたかと思えば、手にしていたのは果物ナイフ。蛍光灯の光に反射し、鋭く光る銀色は、躊躇われることなく抵抗する私の腕に刺さり、皮膚と肉を裂き、再び刺され……
十字の傷を、私の右腕に残した。
「ねぇ、あーちゃん。雫とあーちゃんは、ずっと一緒だよね?」
「うん。あたし達は、お互いがいれば生きていける。」
手当してくれた後、自分の腕と私の腕を交互に見ながら、そんなふうに言ってくれた旭ちゃんの言葉が、ただ嬉しかった。
私にとっても、旭ちゃんが全てだったから。旭ちゃんも同じように思っていてくれたことが、ただ、無性に嬉しかったんだ。
だからその日、お揃いの傷に誓った。
私達は、私達だけを信じようって。