依存偏愛
刹那、背後で響いた、金属の擦れ合う耳障りな音。聞き覚えのあるその音は、間違いなく屋上のドアが開かれる音で。
ガチャン、と大きな音がしてドアが閉められるとともに、ひとつの足音が背後に迫る。
一体誰が、授業中のこんな時間に。
堂々と絶賛サボり中の自分のことを棚に上げ、ゆっくりと視線を向ければ、今現在最も会いたくなかった人物がそこにはいた。
「よぉ。秀才の優等生が、白昼堂々サボりかえ?」
「………椎名。」
あたしがあからさまに眉をひそめると、椎名は何が楽しいのか声を押し殺して笑う。
わざわざフェンス側にいたあたしの横まで来て、フェンスに背を預けながらあたしへと視線を向けた。
ああ、本当に、椎名は苦手だ。
射抜くような視線がゆっくりとあたしを見回し、全てを見透かされるような錯覚に陥る。
「そんな顔しなさんな。せっかくの美人が台なしじゃ。」
「……余計なお世話。」
一刻も早く、椎名から離れなきゃ。
今のあたしの、不安定な気持ちを悟られるわけにはいかない。
傷痕を見られた椎名だからこそ、特に。