依存偏愛
……そういえば、雫は?
椎名は他人に言う気はないらしいけれど、当事者である雫はどうなの。
あたしに今日みたいに突き付けてきた以上、椎名が雫にも同じことをしないとは言い切れない。
あたしは、雫のことをよく知っている。
この世界で誰より、雫のことを理解していると自負しているほどに。
だからこそ、椎名と雫の接触は極力避けたいと思った。だって雫は、あたしとは違うから。きっと動揺を隠すことなんてできないし、無遠慮な椎名のことだ、絶対雫を傷つける。
――でも、もし。
もし、もうすでに椎名が、雫に接触していたら……?
そんな不安に煽られ、いても立ってもいられなくなった。だから先程放り投げたカバンに飛びつき、白い携帯ですぐに雫へ電話をかける。
……もう、部活行っちゃったかな。
それとも、まだHR中、とか……?
長い6コールの後、受話器越しにいつもと何ら変わりのない雫の声が響いた。
それだけで、安心する。
雫の身には何も起こってないのだと、声色で確信できたから。