依存偏愛
side*SHIZUKU
「……じゃあ旭ちゃん、私部活始まるから、切るね。」
『…うん。変な時間に電話して、ごめん。』
「ううん、大丈夫!それじゃあね。」
ぷつり、無理矢理明るく振る舞って終えた通話。淡いピンク色の携帯を閉じながら、小さく息を吐く。
こんな時間帯、それも旭ちゃんから電話が掛かってくること自体、珍しいのに。
私の声が聞きたくなった、とか、それが理由じゃないのは間違いない。きっと何かが、旭ちゃんにあったのだ。
だけど、ただでさえ大谷くんと旭ちゃんの様子が気掛かりで、もやもやしたどす黒い感情が身体中を渦巻いているような今の状況、旭ちゃんに改めて何かを聞く勇気は私にはなかった。
どうしたらいいかわからなくて、どうなっているのかもわからなくて、ただ不安ばかりが募る。
「笹川、行くぞ。」
「あ、はいっ!」
それなのに、当然そんな私に構うことなく計画されていた選抜メンバーの練習が、今日と明日に行われる。
私に声をかけてくれた神部先輩に続いて、通い慣れた中等部の中を進み、向かう体育館。
合宿後、初めて顔を合わす彼は相変わらず、長身で良く目立つ。