依存偏愛
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ようやく練習は、5分の休憩に入った。
体育館に続く廊下にある水呑場は、他のバスケ部員に占領されていたため、私は外にある水呑場に向かった。
外に出た途端、頬を撫でる少し冷たい風。じんわりと額に浮かんでいた汗に、ひんやりと染みる。
それが気持ち良かったけれど、休憩は5分しかない。あまりゆっくりもしてられないと思い、駆け足で水呑場に向かえば、水呑場にいた先客の姿に、思わず足が止まった。
…――タイミング、悪すぎるよ。
今1番、顔を合わせたくなんてないのに。
どうしてこうも鉢合わせてしまうんだろう。
気づかれる前に踵を返そうとした刹那、不思議そうに呼びかける声が背後から響いた。
「……笹川、先輩?」
「……あぁ、大谷くん。」
必死に笑顔を貼り付けて、何事もないように振り返る。そんな私に、タオルを首からかけていた大谷くんは、昔から変わらない爽やかな笑顔で微笑んだ。