依存偏愛
「体育館前の水道、混んでましたもんね。あれじゃ、休憩時間内に水道使えないですよね。」
「……そう、だね。」
苦笑を零しながら、ゆっくりと私の方へと歩いて来る大谷くん。でも、見れば見るほどあの日を思い出して、頬が引き攣る。
…――もういっそ、大谷くんに聞いてしまおうか。そうしたら私も、少しラクになれるかもしれない。
でもそうは思ったものの、やっぱりすぐさま行動、だなんて、私には無理だ。
「笹川先輩?どうかしました?」
「あ、ううん。何でもないよ。」
「なら、いいんですけど。……何か、よくよく見ると顔色も良くない気がしますよ。」
黙って口を噤んだ私に対し、心底心配そうに、大谷くんは眉をハの字に下げる。
でも、そんな。私に君の優しさを向けないで。会いたくないと、向き合いたくないと、私は大谷くんに、悪い気持ちしかいだいていないのに。
だけどそういえば昔から、大谷くんはこういう人だったかもしれない。誰にだって、無条件に優しかった。
ドジで失敗だらけの私だって、他人に無愛想な旭ちゃんだって、彼の優しさの対象として、例外ではなかったのだ。