依存偏愛
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高等部の体育館裏は、日中は人通りが多いためか、比較的綺麗に整備されている。
何のためにかはわからないけれど、ぽつんと取り残されるように置かれている白いベンチに腰掛け、夕闇に染まる空を見上げた。
「笹川先輩!遅くなってすみません。」
「んーん。私も片付け終えてから着替えて、今さっき来たとこだよ。」
夕闇の空から、夕焼けを背景に私の目の前に立つ大谷くんへと視線を移す。
今度はちゃんと、彼の顔をしっかり見ることができた。
「……あの、笹川先輩。オレに聞きたいことって、何ですか?」
「うん。……えーっと、大谷くんって、旭ちゃんと仲良いよね。」
だからゆっくりと、問いかけるというより、ほぼ断定的なニュアンスで大谷くんへと言葉を紡ぐ。
でも同時に、また沸き上がってきたもやもやとしたどす黒い感情に必死で蓋をして、目を見開いた大谷くんに対し、ごまかすように笑う。
「……え?」
「私ね、旭ちゃんが私以外を名前で呼ぶのを、初めて聞いちゃったの。」
そして一瞬、でも確かに揺らいだ大谷くんの瞳を、私は見逃さなかった。