依存偏愛
「珍しいんだよ。旭ちゃんが名前を呼ぶのって。私達にとって、名前は特別だから。」
名前は、特別。
本当に気を許した相手にだけ。
そうやって、今まで生きてきたのに。
「でも大谷くんも、旭ちゃんのこと名前で呼んでるんだね……?」
そこまで言ったとき、何だか旭ちゃんに裏切られたような気持ちになった。
私達のルールを勝手に侵した旭ちゃんが、許せないと思った。それと同じくらい、大谷くんも。
「それは、」
「それは、何? 大谷くん、旭ちゃんが好きなの?」
蓋を閉めたはずの思いが、堰を切ったように溢れ出す。
聞くつもりのなかったことまで、口をついて出てきた。
明らかに困惑した大谷くんの表情が、私を見下ろす。
全く、私は何という答えを期待しているのだろう。
学年は違えど、中等部の頃からずっと一緒に部活をしてきた。
もし、大谷くんが旭ちゃんを好きで、旭ちゃんも大谷くんが好きだったなら、私にそれを否定する権利なんて、ありはしないのに。