依存偏愛
我ながら最低だと、間違っていると、それはわかっていたけれど。背に腹は替えられない。もう、引き返せない。
動揺を隠せない彼を、追い詰めるように言葉を投げかける。
「だからね、大谷くんが旭ちゃんを好きだったらどうしようって、ずっと思ってたの。でも、違うみたいで良かった。」
――嘘つき。
思ってもいないことを、べらべらと……
ああ、自分自身に吐き気がする。
「…ね?だから私と、付き合ってくれる?」
バイオレットに染まりかけた夕闇の中、暗さで大谷くんの表情は良く見えなかった。
でも、拒否を許さないような場の雰囲気に、まるで諦めたかのように小さく頷く姿を見て、私は口角を上げる。
「やったぁ!ありがとう、嬉しい!」
これこそが旭ちゃんに対しての裏切りであると、私達の誓いへの冒涜であると、自覚しているからこそちくりと胸が痛む。
けれどそんな沸き上がる罪悪感を押し殺して、私は大谷くんの手をとった。
…――ごめんね、旭ちゃん。
そう、心で何度も呟きながら。
【CHAPTER:03/side*SHIZUKU/END】