依存偏愛
そんな折り、あの日と同様、背後でドアが開かれる音が響いた。そして、これまた同じ様に近づいてくる足音に、顔を歪めてしまったのが自分でもわかる。
けれど、嫌悪感を思いっきり込めて振り返った先、視線の先にいた人物は椎名ではなかった。
まるで想定外の人物に、肩透かしを喰らった気分になる。
「やぁ、片倉さん。サボるなんて、意外と悪い子なんだね。」
そんなあたしの気も知らず、いつもの笑みを浮かべながら結城はあたしの横へと並んだ。
一瞬空へと向けられた視線は刹那、再びあたしへと向けられる。
「……結城、だったんだ。」
「結城って……。一応俺、君の先輩なんだけど。」
「……知ってる。」
呆れたように苦笑を零す結城は、何を思って今、あたしの隣に居るのだろう。
「まぁ、そんなことは今はいいや。」そう呟くとともに、結城の瞳は前方に広がる青を映す。
ほんの少しの、沈黙が怖い。