依存偏愛
何も知らない結城が、あたしと雫のことを聞いてくる訳が無い。
そして今、このタイミングで聞いてくるとするなら。思い当たるのは、ただひとつ。
「……随分と遠回しな聞き方だね。
そんなに気になるなら、ダイレクトに聞けば良い。“椎名と何かあったのか”って。」
だいたい、あの椎名があたしひとりに執着する自体がオカシイのだ。椎名と幼なじみらしい結城が、それに違和感を感じない訳が無い。
あたしの言葉に、結城は驚いたように目を見開いて、眉を下げて笑った。
「はは。さすがに鋭いね。それで?何であいつは、君に執着してるんだい?」
そんなの、あたしが聞きたい。
雫と双子だっていうことや、傷痕のことを差し引いたところで、椎名の意図は掴めないのだ。
親友のあんたがわからないなら、あたしにもわかるはずが無い。ただひとつわかっているとしたら、今のあたしにとって椎名が、あたし達へと干渉する邪魔な存在であるということだけだ。
「知らないよ、あんな奴。」
だからそう言い捨て、未だ何か言いたそうな結城に背を向ける。困ったようなため息を背中で受け、あたしは屋上をあとにした。
…――これ以上の干渉から、まるで逃げるかのように。
【CHAPTER:04/side*ASAHI/END】