依存偏愛

「やめてくれよ。お前に改めて“センパイ”とか呼ばれると、寒気がする。」

「ははっ。相変わらず酷いのう、明人。」


2メートル程の高さから飛び降り、明人の横へと並ぶ。フェンスに背を預けながら座れば、呆れたような明人の声が頭上から降り注いだ。


「酷いのは渓都だろ。盗み聞きかい?」

「……わざとじゃなか。不可抗力じゃ。」

「ふぅん。まぁ、別にどっちでもいいさ。
……で?その表情を見る限り、話は全部、聞いていたんだろ?」


聞きたくて聞いた訳じゃないのは確か。
「まぁな。」だなんて小声で返せば、明人は端正な顔に怪訝な色を浮かばせる。


「……何で片倉さんに、近づいたんだい?」

「わかりきったことを聞きなさんな。ただ、からかってやるつもりだっただけじゃき。」


常に一緒に居た、2人。その異質さが気になって、少しからかってやりたくなっただけ。あの傷痕を見てからは特に、その衝動が好奇心に助長されて大きくなったのだ。


「おまんも、気になっちょるんじゃなか?」

「……まぁ、否定は、しないよ。」


広がる青を目を細めながら見つめ、明人は何かを考えるように呟いた。
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