依存偏愛

彼女の何かが俺の心を捉えて、ただ、苦しかった。

ときおり感じる、彼女を束縛する何かを取り去って、彼女を解放してあげたいと思った。

あんな無表情じゃなく、笹川に見せるような笑顔で、笑ってほしいと思った。


「……のう、明人。」

「何だい?」


誰かの為に何かをしたいと、そう思うことが恋なのならば、間違いなく俺は片倉に惚れてしまったのだろう。


「俺に、片倉の心を開かせることが、できると思うか?」

「さあ。それは渓都しだいだろ。」


…――俺、しだい。
明人を見上げていた俺に視線を落とした明人は、「でも、」と続ける。


「わかってると思うけど、人の気持ちは、一個人がどうのこうのできる問題じゃない。」

「……ああ、そうじゃな。」


そんなのは、わかっとる。
もちろん、片倉がそれを拒んでいることだって。

でも俺は、たとえ片倉がそれを望んでなくても、他人からの干渉を拒絶したとしても。俺は俺の、思った通りに行動するだけじゃき。

そんな決意を込めた視線を明人に向ければ、明人がいつもの柔和な笑みで微笑んだ気がした。





【CHAPTER:04/side*OTHER/END】
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