心霊旅館 焔-ホムラー
そのとき、ホロウの口が静かに開く。


「……それでいいのだな?」

「なにっ!?」


その思いもよらない言葉に、サクラは大きく目を見開いた。


「で、出来るのか!?」

「だが……それには条件がある」

「条件……?」

「死んだ人間を2人も生き返らせるのだ、当然だろう」


ホロウの声が部屋の中に響く。


「1つ目の条件は……生き返らせたい者の魂が強く結び付く場所……すなわち命を落とした場所が必要だ」

「命を落とした場所……あの旅館か!?」


ホロウはうなずく。


「旅館……」


口にするだけで、辛い想いが胸を裂く。

サクラは、拳を強く胸に当てた。


「そして2つ目……代償として命を捧げてもらう」

「命だと!?」


ニヤリと笑うホロウ。


「俺の命と……引き換えというわけか……」


サクラは、つぶやく。


(だが……2人が生き返るのなら、それでも構わない……)


しかし、ホロウは首を横に振った。


「お前ではない……他人の命だ」

「な、なにっ!?」

「他人の命を、炎の中に捧げてもらおう」


ホロウの口元が、再びニヤリとゆがむ。


「1人生き返らせるにつき、2人の命を頂く」

「な……!」

「それも、同じ日にな」


甲高い笑い声が、部屋の中に響き渡る。

その雰囲気に気圧されたかのように、サクラはよろけ、後ずさった。


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