年上王子様とのアリエナイ××②
日の短いこの季節、夕日は徐々に海へと隠れるように沈んでいく。
「綺麗」
それしか言葉が出てこなかった。
「あいつのこと、忘れるのか?」
ふいに落とされた質問。
忘れる・・誰を?
黙っているともう一度質問をされた。
「お前はあいつを忘れられるのか?」
なんで、そんなこというの?
そんな・・人が一生懸命忘れようとしてるのに。
隠してるのに。
「できないよな。そんな簡単に忘れられる恋じゃなかったんだろ?」
近づく距離。
さくさくっと足を鳴らして
あたしの前に向かい合った。
「悲しかったら悲しい顔してろよ。無理して笑ってるとこっちが辛くなる」
何でかな?
この人はこんなに優しい言葉をかけてくれるんだろう。
そんなこと言われたら
イヤでも泣いちゃうじゃない。
「ううっ」
こらえていた涙が溢れてくる。
「我慢する必要なんてねぇよ。泣きたいなら思い切り泣けばいい。俺がいるから」
壊れたように何かが外れてしまって
「うわぁ~~~~」
気づけば自分から中村さんの服をつかんで泣いていた。