年上王子様とのアリエナイ××②

「あれ?」

「何かいい匂いしない?」


あなたの嗅覚は犬並みですか?

心の中で呟きながら

「そ、そうかな?」

曖昧に答えてみる。


大丈夫、あたしは今女優なんだよ。

あたしの演技にさすがの翔さんも

「いや、絶対にする。ほら、柚子も嗅いでごらん?」

言われるまま瞳を閉じて匂いを嗅いでみる。


クンクン

確かにする、チョコレートの匂い。


「翔さん、先に着替えた方が」

「ヤダ。どこ、チョコレート」

実は翔さんは大のチョコレート好き。


「どこって..」

「あ、もしかして」

「あ、ちょっと!!!」


手を伸ばして走るあたしに掴まる事無くキッチンに入り

「みーっけ」

悪戯っぽい笑顔を向けてきた。


途端に嫌な予感がする。


翔さんがこの笑顔を向けて無事でいられた事なんかないもん。


「俺さ、一度やってみたかったんだよね」


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