メリー何とかの掛け声と共に【短編コメディ】
12月25日
光の丘公園にて。
大きな時計台の下で一人の女性が立ち尽くしていた。
クリスマスの今日は公園の中は綺麗なイルミネーションで彩られ、恋人たちで溢れている。
場違いな気もするがそれでも何度も時計に目をやりながら待ち人が来るのを待っている。
『ほぉーあの子が彼女さんか。結構可愛いな。いや、でも俺の彼女には…』
「いやいや、うちの幸子さんには…。」
時計台の裏側から男3人が顔だけを覗かせている。
「…人の彼女を変な物差しで測らないでくれます?
それじゃ俺行きます!本当にありがとうございました。」
『兄ちゃん、ちょっと待ちな。』
丁寧に礼を言って彼女の方へ向かおうとした川島の後ろ襟を鷲掴みにして引き戻す。
『せっかくプロポーズするってのにそんなラフな格好じゃ場違いだろ。
餞別だ。持って行きな。』
田中井は自身の焦げ茶のスーツを脱ぐと川島に差し出す。
『サンタクロースをパシリに使った挙げ句に俺のスーツを着ていくんだ。
必ず成功させろよ。』