執事と共に聖夜を。
「……朝、いつものように部屋に入ったら、主人が鼻血を出して倒れている、というも奇妙な光景ですね」


冷たくなった床に仰向けに倒れているのは、セーラー服の少女である。


「ええ、私もそう思うわ」

「一応聞いておきますが、何をなさっているのですか。お嬢様」

「見ての通りよ」


お嬢様――そう呼ばれた恵理夜は仰向けのまま、覗き込む青年に答えた。



形の良い眉に、真っ黒な瞳は、青年をまっすぐに見つめている。

腰にも届く黒い髪は、日本人形のようにきれいに切りそろえられている。

しかし、陶磁器のように白い肌は、鼻から流れる血によって無残な光景となっていた。

よく見ると、滑らかであるはずの頬も少し腫れている。


「…………」


呆れているのか、驚きが続いているのか青年は何も返せないでいた。

そんな青年に恵理夜は、いたずらっぽく微笑んだ。
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