執事と共に聖夜を。
「おはよう、春樹」


今更ながらの挨拶。


「おはようございます、お嬢様」


戸惑いながらも春樹と呼ばれた青年は挨拶を返した。

その、整えられた黒い髪が縁取るのは、とても端正な印象を抱かせる顔だ。

高い鼻に切れ長の目。

しかし、その眉間にはくっきりとしわがある。


「……寝心地がいいとは思えないのですが」


ようやく春樹は床に膝を着きながらそう言った。


「悪くはないわよ。冷たくて」


しかし、床についた春樹の膝は早くも冷え始めた。


「馬鹿な事を言っていないで」

「失礼ね」

「起き上がれますか」

「馬鹿ね。それができないからこうしてるんじゃない」


春樹は、ため息をついて恵理夜の背中に腕を回した。


――恵理夜は、血液の成分が不足する病にかかっていた。

免疫が低く、血も止まりづらかった。
< 3 / 93 >

この作品をシェア

pagetop