執事と共に聖夜を。
「わかったことがあるわ」
――恵理夜は、両親の寝室のベッドに寝かされていた。
「なんです」
「私は性的に倒錯はしていなかった」
は?と、その顔を拭っていた春樹の手が止まる。
「殴られても痛いだけだもの。マゾヒストの資質は持ち合わせていなかったわ」
「……それは、何よりです」
口だけでそういいながら春樹は、その鼻血が止まったことを確認した。
「ついでにもう一つわかったわ」
「なんです」
「暴力は、何の意味もない」
春樹は無言でその頬に触れた。
「申し訳ございませんでした」
「どうして謝るの」
「私が至らないばかりに、傷を負わせてしまいました」
「至らないのは、あの人たちも同じよ」
恵理夜は起き上がった。
「大丈夫ですか」
「平気。クローゼットの中身が見たいの」
「かしこまりました」
春樹は、書斎の扉を開き、解いた鍵をクローゼットに静かに差し込んだ。