執事と共に聖夜を。
「……っく……」
シラヤナギが立ち去った途端、恵理夜は堪えていた涙を溢れさせた。
「お嬢様」
春樹は静かにハンカチを差し出した。
「……祈りが、届かないのはわかってるの……」
差し出されたハンカチで涙を拭いながら呟いた。
「平和とか、届かない祈りなんだよ」
テレビから聞こえる悲劇は終わらないし、泣いてる子供達や、震えてる人達も減らないし、シラヤナギや祖父や自分の周りから銃や暴力は無くならない。
恵理夜の中で、それだけは確信できる事実。
「それでも、祈っていたい。私も」