執事と共に聖夜を。
「……今朝の朝練が、役に立ったわ」

「おや、喧嘩でもしましたか」

「喧嘩ではなかったわ。」

「どうか、ほどほどに」


春樹は、ミラー越しに後部座席に座る恵理夜を諌めるように言った。

しかし、恵理夜は聞いていなかった。


「クリスマス、ね……」


まるで見当はずれの言葉。

そのいつもの様子に春樹は肩を竦めるだけだった。



「クリスマスイヴ、どうしよう……」



その呟きは、春樹に届かないほど小さかった。
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