新パラレルワールド参加作品=The shadows=天才浅海ユウと凡才月星大豆の奇跡的コラボ[企画]
腐りかけた門扉を開けて、ガタピシと喧しい引き戸の玄関をくぐり、申し訳程度の廊下を歩くと、その奥にうちの食堂が有る。
洗わなければならない物が無惨に積み上がった台所を見て、俺は心底うんざりした。
───そういえば、家に帰って来ても、何も喰うもん無かったんだよなぁ───
冷凍庫の中には親父が俺の為に買ってくれた、様々なフレッシュフルーツが入ったアイスキャンディーが数本。
冷蔵庫たるや、ポン酢と麺つゆのビンが鎮座しているのみだ。
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小6の頃。お袋はいつしか俺のベッドで寝るようになった。
最初は親父のイビキがうるさいから、なんて言ってたけど……それから先、彼女が夫婦の寝室に戻ることは無かった。
手前味噌だが……お袋は美しく社交的で、飲んだくれの俺の親父には勿体ない程のイイ女だった。
生活が苦しいからといって始めた飲み屋のバイト。その先で知り合った若い男と、お袋は家を出た。
それからは親父と2人っきり。狭い借家は散らかり放題。
当然こうして昼に帰って来ても、誰に咎められることもない。