新パラレルワールド参加作品=The shadows=天才浅海ユウと凡才月星大豆の奇跡的コラボ[企画]
それからしばらく辺りを歩き回った。
が、暗くなるまで、他の人間もコミュニティも見つからず、結局あの男の人のいた場所に戻ってきてしまった。
無人のタープの中には明かりがついていて、辺りにはいい匂いが漂っている。
こんな場所で自炊をしているんだろうか。
───あの人は一体……───
不思議に思いながらタープの中を覗いていると、背後から「お帰りなさい」という声がした。
あの人がニコニコ笑いながら立っていて、片手には茶筒を持っている。
「本当はコーヒーが飲みたかったんだけどさ。さ、入って」
彼はそう言いながら、私を友人のようにタープの中に招き入れてくれた。
パンとハンバーグ。
野菜のたくさん入ったスープ。
全部レトルトみたいだけれど、本格的な匂いがしている。
「い、いいんですか? いただいても」
「もちろん」
笑うと急に幼くなる笑顔にドキリとさせられた。
「いただきます」
急いで彼から目をそらし、手を合わせた。