新パラレルワールド参加作品=The shadows=天才浅海ユウと凡才月星大豆の奇跡的コラボ[企画]
_ 悪夢  ̄ a k u m u
空腹が満たされ、やっと人心地がついた気がした。
私はお茶を沸かしてくれている彼の背中に声をかけた。
「あの……。私、フウカっていいます」
苗字は夫のものだから、言いたくなかった。
「ああ。俺はリュウ」
彼が同じように名前だけを答えてくれたことが、私の気持ちを楽にした。
「でもフウカさんはラッキーだよ。エスカレーターからここまで影に襲われずに来れたんだから」
「ええっ?」
「だって、地下に降りたら真っ暗だったでしょ」
確かに夕闇迫る地下モールは暗かったが、温かな光に吸い寄せられるように、ここまで来てしまっていた。
「影がどこに隠れているか、解らないじゃないか」
確かに言われてみればそうだ。が、そもそもあれはなに? あんなものは今まで見たこともない。
「リュウさん……。私が眠っている間に、一体何が起きたんですか?」
「何がって?」
「私、目がさめたら、道の上に寝てて……。周りは廃墟みたいになってるし。戦争か地震でも起きたんですか?」
「そうか。やはり何も知らないんだな」
リュウと名乗った男の人は、憐れむように私を見ている。