新パラレルワールド参加作品=The shadows=天才浅海ユウと凡才月星大豆の奇跡的コラボ[企画]

 漸く冷静さを取り戻した彼女はしかし、さめざめと泣き続けた。


 俺はそんな彼女をいたわるように肩へ手を置いた。


 彼女は俺の腕を手繰り寄せて縋り付く。


 その白い、強く握り締めたら折れてしまいそうな細い指が、堪らなく愛しくなった。


「この世界に俺が居られるのは後6日。フウカさんさえ良ければ、一緒に元の世界へ戻ることも出来るんだけど……」


「でも……あの世界にはあの男が……」


「だって、この世界にいるのは危険過ぎるだろう」


「いいえ。私みたいな女には、こういう地獄のような世界がふさわしいのよ」


「なんで? 君は被害者じゃないか。なんでそんな風に言うんだ?」


 尋ねると彼女はハッとして俺を見詰め、その美しい両目からまたボロボロと大粒の涙をこぼした。


そして何か言いたいことを堪えるように、俺の目を見つめている。


涙で揺れている彼女の美しい瞳。


───キスしたい───


 俺は唇を固く結んで、その衝動と戦っていた。



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