新パラレルワールド参加作品=The shadows=天才浅海ユウと凡才月星大豆の奇跡的コラボ[企画]

 その時だった。


───あっ、物音がした!───


 しかし何かをズルズルと引きずるような音だ。いつもの軽快なリュウの足音ではない。


───え?

何の音?───


 私はこの世界のことを何も知らない。もしかしたら影以外の脅威がやって来たのかも知れなかった。


身を固くしながら、いつもリュウが降りてくる階段室の方向に目を凝らす。


暗闇の中、こちらへ近づいて来るものをテントの灯りが形にした。


───リュウさん?───


 左足を重そうに引きずりながらこちらへ向かってくるのは、間違いなくリュウだった。


「リュウさん?!」


 彼の尋常ではない歩き方をみて、思わずタープを飛び出していた。


「フウカさん、危ないから中に入って。上に影が居て、さっき犬笛を吹いたとこだ」


 彼の体を支えようとした私を、血で汚れた手がタープへ押し戻す。


その声も手の力も弱々しい。


 彼は私の後から、倒れるようにしてタープの中へ転がり込んだ。



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