ストロベリー革命
「ああっもうっ!! この話はまた今度よ。まったく、酒でも飲んでないとやってけないわ」

 理事長はかなりの酒豪で、ビンごとお酒を飲んでいた。

 教育の場で隠れてお酒を飲むとは、たいした度胸である。

 隠し事を自らの意思で貫き通している面では、この親子は似た者同士だ。

 また今度と言われたので、天花も理事長室を出て直を追いかけた。



 直はというと寮へは帰らずに、中庭から学園裏に続く道を一人で歩いていた。

(……俺、天花の事好きになっちゃ駄目だ。これ以上天花に迷惑かけられないから)

 母親にバレた上に、天花の事が好きだと気付かれたら、確実にどちらかは学園から追い出される。

 自分一人が犠牲になればいいものを、関係ない天花まで巻き込むワケにはいかない。

「……この気持ちは忘れよう」

 直は淡い恋心を胸の中に封印した。

 しかし決意とは裏腹に体は正直だ。

 直の瞳から一粒の小さな涙が溢れ落ちた。

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